中途即戦力採用社員を解雇せず降職することの労務管理上の是非

コンチネンタル・オートモーティブ(解雇・仮処分)事件東京高裁平成28年7月7日決定労働判例1151号60頁では、中途採用された元マネージャーの能力不足解雇を有効としています。この結論自体は妥当と思われる事案ですが、解雇に先立ち会社側は異動を実施し、別のマネージャーのもと1担当者として業務に従事させています。この事案ではマネージャーというように明確にポストを限定して採用したか判然としないので、会社側の対応がやむを得なかったとも言えます。しかし、中途で、即戦力高待遇で採用した場合は、どのようなポストや能力を前提として採用したか雇用契約書等で明確にすべきです。そして、運用としてもそのとおり行い、契約書が定める基準に達しないことが証拠上明らかな場合は、降職せずに、退職勧奨をし、退職勧奨に応じない場合は普通解雇すべきです。いったん降職してしまうと、会社として、基準を降職後の業務レベルまで落としたことになってしまいます。この裁判例では1担当者としても務まらなかったようですので解雇有効となりましたが、降職後の業務をこなせるとなりますと、会社としても当初の採用意図に反し不満が残るまま雇いつづけざるを得ない結果になりかねません。